たべもののはなし

食べることばかり考えてる

干し柿とアンラッキーと

干してあるフルーツは大体素晴らしく美味しいが、中でも干し柿はかなり最高のご馳走である。

内側から出た糖分が真っ白な粉になって果実の周りを覆い、実は柔らかくも歯ごたえがある。信じられないほど甘く、果肉はお菓子のような食感だ。あんぽ柿だと実に美しいオレンジ。種の周りはムチっとしたゼリー状になっており、ひときわ甘い。固いヘタぎりぎりまで味わったら、もう満足感がすごい。ここで日本茶でも飲めば秋のおやつタイムは完璧だ。


こんなに美味しい干し柿、もとは渋柿だという。かつて祖父母宅の庭の柿を食べた際渋柿に当たったことがあるが、もうあれば想像を絶する。今なお鮮やかに思い出せる衝撃!噛んだそばから渋の成分が口の中を覆い尽くし、全く甘くなく、舌も痺れたようになり、悲しみに包まれ、空は暗雲に覆われ、大地は荒れ、海が叫ぶ。そのくらいシブい。


もちろん違うであろうが、「このッ…渋柿め!!」と憤慨しながら外に吊るして干し、すっかり忘れた頃申し訳なさそうに萎んだ柿たちがちょっと可哀想になって一口食べたらまぁ美味しいこと美味しいこと、これからは渋柿も美味しく食べられるわ、めでたしめでたし、というのが始まりだったりするのだろうか。


シブい出来事があったとき、たった一口のパンチで落ち込むのではなく日なたでじんわり干すように付き合えば後々甘くなるのかもしれない。


干し柿、大好き。