たべもののはなし

食べることばかり考えてる

味噌汁、味噌とお出汁と幸せの一杯

味噌汁の具で何が好きかという話は好きだ。各家庭のしあわせな時間を見出す。私の好きな具にまつわる話をしよう。

まずはジャガイモとワカメ。小さい頃から変わらず好きだが、何これ美味しい!と夢中で食べていたとき母が「寒い場所に住むエスキモーは山からジャガイモを、海からワカメを採って、味噌汁を食べて寒さを耐えるんだよ」という旨の話をしてくれ、その話のロマンチックさ込みで味わっていた。なおこの話、本当ではないと思う。でも寒い寒い冬の朝にジャガイモとワカメの味噌汁を食べながら聞くには良い話だった。


次にキャベツ。これは春のご馳走。粗めに刻んだキャベツだけだが、これが本当に美味しい。春に作るキャベツの味噌汁は黄緑が本当に綺麗で葉っぱが甘く、春の訪れを喜ばずにはいられない。寒くないかなと恐る恐るセーターではなくワンピースを選んだ朝に食べる春キャベツの味噌汁が好きだ。大体春というものを緑が鮮やかで元気な野菜から感じるが、この春キャベツの味噌汁はその中でもわかりやすく春の味だ。


そして茄子とかぼちゃとジャガイモの味噌汁。これは祖母が教えてくれた三色(みいろ)の味噌汁である。これほどまでに「栄養」や「滋味」を感じる味噌汁の具もそうあるまい。疲れた時に作ってくれて、甘く、食感は優しく、染み渡るみたいに美味しかったお味噌汁だ。祖母の愛情込みの味わいだったのかもしれない。


最後にアサリ。これもずっと好きだが、割とイレギュラーな思い出が寄り添っている。例えば、潮干狩りにいった思い出。千葉の潮干狩り場に行って貝を探していたのだが、そこの干潟にある電信柱のような円柱があり(今思うと上を通る陸橋の柱だったかもしれない、いずれにせよ高くそびえる太い柱)、その根元にはものすごく大粒のアサリがいる。それらを発見し、大喜びで持ち帰った。その夜に作られたアサリの味噌汁はそれまで見たことない大粒で、まるで怪獣の子供を食べているかのような楽しい気持ちになった。


イレギュラーはもう一つある。隣でアサリの味噌汁を食べていた母が突然声を上げた。なんのこっちゃと思っているとカニカニ!と叫ぶ。いよいよわからなくなってオロオロしながら見つめていたら、母は食べていた貝から小さなカニを取りだしニヤリと笑った。貝も食事中だったのだ、悪いことをしたがカニも味わえてラッキー。その何年か後に私もラッキーカニを引き当てたが、あれはテンションが上がる。食物連鎖を邪魔してごめんねという気持ちもなくはないが、それでもラッキーが勝った。


そんなわけで好きな味噌汁は色々、思い出も込みで味わっている。


味噌汁、大好き。