たべもののはなし

食べることばかり考えてる

うなぎパイは、夜の

私が初めてうなぎパイと出会ったのはもういつだか覚えていないが、おそらく親戚が持ってきてくれたのがはじめましてだったはずだ。

 

うなぎを模したであろう平べったくて長いルックスが何とも美味しそう!ザラメのようなお砂糖が周りにつき、サクサクとした食感を楽しんでいると甘い中にスパイシーな雰囲気のある香りがふわりとする。大変美味しい。牛乳にも紅茶にも合う。

 

さてこのうなぎパイ、「夜のお菓子」というキャッチフレーズはあまりにも有名だ。

 

子供の頃からうなぎパイを食べるたび、母が「ホラ見て、夜のお菓子だって」とやたら教えてくれるので、なんとなく意味のある「夜」であるとは感じつつもイマイチ夜の意味は掴めずにいた。

 

やがて「夜の」とか、もっと言うと「大人の」とか、そういうものにフフッとなるお年頃もあったが、さりとてこのうなぎパイが果たしてその手の"夜の"お菓子なのかはわからなかった。

 

さてその頃から随分経った今もうなぎパイは変わらず好きである。

いくつも夜を越えてきて、その意味も多岐に渡ってきた。気づけばすっかり夜も大人も、自分の生きる世界の中の一部になった。

 

静岡に出張に行った帰りにうなぎパイを買った。家族総出でうなぎパイは好きなので沢山買い、ご機嫌だった。

 

家につき、荷物を降ろし、ふと見たそのお土産の、まあなんと…美味しそうなこと。記憶の中のうなぎパイが今食べると絶対美味しいよと囁く23時。良い子は食べないどころか寝てる時間に煌々と電気をつけて大箱のうなぎパイと対峙する、大人の私。

 

そこで躊躇したら、私はまだ思春期だったと思う。でもとっくに通り過ぎて、大人になってしまった。えーい、明日の私ごめーん、とちょびっと謝りながら包装紙を開けて個包装をひとつ。非常に美味しかった。

 

開けた窓からは涼しい風が入り、虫の声が聞こえた。疲れた体で食べたからか、洋酒の香りがすごく沁みた。なるほどこれは、夜のお菓子だった。

 

うなぎパイ、普通のも美味しいが先日買ったV.S.O.P.バージョン、あれは完全にワルなオトナのお菓子である。「いけないこと、しようよ…」と言いながら深夜に食べたいやつである。オススメだ。

 

うなぎパイ、大好き。