たべもののはなし

食べることばかり考えてる

大葉の庭

大葉が生い茂る庭で育った。

 

庭が広い家に住んでた頃、一角に家庭菜園コーナーがあった。最初はラディッシュとか小さい人参とか植えていたが、気づいた時には大葉とオニユリコーナーになっていた。大葉を摘んできた祖父の前髪がオレンジになっていて、どうしたんだと尋ねたらオニユリの花粉が付いてしまったと苦笑いされたのは良い思い出だ。

 

夏になると毎年ぐんぐん伸びて葉を茂らせ、緑が鮮やかになっていく大葉は私にとって夏の風物詩だった。また大量にあるので、そうめん、天ぷら、野菜炒め、酢の物、などなど夏の食卓には庭で摘んだ大葉が必ずあった。

 

なので私にとって大葉は買うものではなくうちに生えてるものだった。今でもスーパーで根元を束ねられてる大葉を見かけると不思議な気持ちになる。

 

庭は最高の遊び場だった。植物がたくさん。ピンクと白が可愛いアセビ、食べられる実がなるユスラウメ、本当にヒゲみたいなリュウノヒゲ、鮮やかなピンクの百日紅、上品な色のニオイバンマツリ、白が冴え冴えとしていたカラー、などなど、などなど。

虫もたくさんいて、蚊に刺されるわミミズは出るわ、何処にいたんだこんなのと思うような大きくて変な色の蜂が現れるわ。そうかと思えばアリを見つけて春を感じたり、小さいクワガタが迷い込んできたこともあった。

 

時折隣の家のとても大きなシベリアンハスキーが見えると嬉しかったことも覚えている。当時まだ私自身体が小さいのでものすごく大きく見えた。

 

チョークで落書きもたくさんした。コンクリートの床に線路を落書きしてダンボールで電車を作ったり、古代人になりきって壁に棒人間をそれらしく描いたり、、その床をデッキブラシで豪快に掃除したのも好きだった。

 

今となってはたまたまその場所に雨が当たらないだけだったろうと思うが、水の神様がいるならばこの落書きは雨が降っても消えない筈だ、と言いながら描いた落書きが不思議と残っていたときは驚いた。

 

さっと思い出せるだけでもこんなにも鮮やかである。外遊びも自然も縁遠いと思っていたが、私は家族の丹精する庭に育てられたのかもしれない。

 

今年はなんだか大葉が美味しい。

 

大葉、大好き。