たべもののはなし

食べることばかり考えてる

海鮮丼と贅沢論

学生の頃の思い出の味といえば色々あるが、その一つが海鮮丼。

 

ある日、大学の友人に海鮮丼屋さんがあるから行こう!と言われた。海鮮丼、存在は知りつつも食べたことがなく想像の中では美味しい以外の感情をもたらさない食べ物だ。二つ返事で了承し、昼休みに街に出た。

 

校舎から15分ほど歩いたところにあり、少し遠かったものの昼休みのお出かけはたいそうワクワクした。期待に胸を膨らませながら到着したテイクアウト専門の海鮮丼屋さん。

 

そこに並ぶ品々は驚くほど安かった。なんと、500円ちょっと。学生の我々、大歓喜!しかも種類がめちゃくちゃ多く、ウニが入っているものなどもあったのだ。これは嬉しかった。どれにするーこれにするーとはしゃぎながら選び、いそいそと校舎に戻って食べたのは楽しかったなあ。

 

しかしいかんせん徒歩15分、往復30分はなかなかに骨のある時間だ。次の授業が控えてたり課題が終わらなかったりしているとその時間はない。寝不足が続くと、昼休みにそんな出歩きたくないよ〜な気分の時だってある。

 

かくしてそのお店の海鮮丼は私の中でたいへんな贅沢品になった。お金ではなく、時間と気持ちと体力に余裕があり、外を歩くに気候が心地よく、お腹が空いている時というのはなかなかどうして貴重な存在だ。そのプレシャスな時間を捧げて手に入れる食べ物が海鮮丼であった。とってもとっても好きだった。

 

海鮮丼は色々食べた。磯丸水産の豪快な海鮮丼も、金沢のべらぼうに美味しい海鮮丼も、築地の早朝限定の海鮮丼も、どれもこれも美味しく贅沢だった。

 

しかし、そこでの「贅沢」は時間や気候によるものとは少しニュアンスが違った。青春時代の贅沢な時間、それはやはりあの少し遠い海鮮丼屋さんにあるのだ。

 

これを書くにあたり初めてそのお店のホームページを訪れた。変わらずの値段、変わらずの場所。会ったことのない後輩たちよ、昼休みは書を捨てよ町へ出よう、そうして海鮮丼を手に入れ青春時代を謳歌するがよい。

 

海鮮丼、大好き。