たべもののはなし

食べることばかり考えてる

ちくわぶと郷愁

ちくわぶ、まずもってその響きが愛しい。私はピュアな子供だったので、ちくわぶの「ぶ」で毎回爆笑していた。ちくわ〜〜…ときてからの、ぶ!最高!万歳!!なんなら今も全然クスッとできる。

 

いちばん最初に食べたおでんなる食べ物にちくわぶは入ってなかった。恐らくはその時も名前のファビュラスな響きにつられて、次のおでんはちくわぶ、アハハ、ちくわぶというやつを、入れてよ、アハハ!!とねだった記憶があったりなかったりする。

 

出汁がよくしみてムッチリもっちり、真っ白で柔らかくも弾力があり、しみじみと美味しい。よく煮込まれてはじっこのあたりが崩れかけてるやつなんてもう、もう最高。おでんの具の中でも相当に美味しい方だと思って愛しているが、どうやら東京ローカルらしい。みんな、もっと食べて!知って!本当に美味しい。

 

おでんの具の地域性はお雑煮のそれ程ではないだろうが、しかし確実にある。よく聞くのは北海道のやつは貝などが入っている、名古屋は味噌おでん、関西はお出汁が白い、などなど。どれもこれも美味しそうである。

 

しかしながら、いつもおでんを食べるときの「ア〜〜、これこれぇ」感はきっと感じなくて、おでんといえど土地のもの、これも誰かの故郷の味なのかしらという思いはきっとあり続けそうだ。本当に不思議だが、小さい頃からずっとちくわぶ満載東京おでんを食べているからそうなるのだろうか。

 もうちくわぶ食べると美味しくて落ち着いて本当に心が無になる。しみじみ味わって、今年も冬が来ちゃったなぁなんて思いながら味わっている。

地元で食するおでんに関する情報は既に頭に入りきっているし、イレギュラーな要素もなく、ただただあったかくて美味しいなぁというところでおでんに関する思考は止まる。止まっていない他の部分は冬の寒さや家族との会話に充てられる喜びがある。

きっとどこのおでんも、その土地の人々にとってはそういう食べ物なのだろう。でも私はきっと、どの地域のおでんを食べてもおそらく脳の大半はニューおでん情報に割かれ、新しい体験として迎えてしまう。

 

つくづく馴染みの味、故郷の味というものは不思議で素敵で面白い。そして「ちくわぶ」というなんとも面白おかしい響きの食べ物がそんな風に味わえるのが、実はめちゃくちゃ嬉しい。

 

ちくわぶ、大好き。