たべもののはなし

食べることばかり考えてる

ハイボールとの遭遇

「どうにもこうにも酒が飲みたい」

そういう思考になると、無意識に思わぬ挑戦などしてみたくなってしまうものだ。

 

そんなことを考えたのは、大学時代の友人と会うことになったとある夜である。詳細は忘れたがそのとき私は底抜けにポジティブで、「どうにもこうにも酒が飲みたい」と朝からずっと思っていた。

年齢とともに甘い飲み物よりも烏龍茶を選ぶようになってきたのもあり、カクテルじゃヌルい、酒に弱いたちでありながら、酒!というものを飲みたかった。

きっと大学時代の無茶苦茶をともに乗り越えてきてくれたアイツなら私がヘベレケになろうと爆笑してくれるはずだという安心感もあった気がする。

 

店のメニューでふと目に付いた、「ハイボール」。奇しくもその日の朝、『白州12年』と『響17年』が販売休止のニュースを見たのであった。ハイボールなどが普及して予想よりウイスキーの消費量が増えたからだという。

 

なるほど、ウイスキーなる甘美な響きの資源を枯渇させる程に愛されているならば、きっと美味しいに違いない。なにより酒好きな人が飲むイメージだ。今日はそれで酔おう、と生まれて初めて「ハイボール」と注文した。この歳になっても人生初って全然ある。

 

して、注がれたウイスキー。薄い黄色は香りの強い蜂蜜みたいな色で、四角がたくさんデザインされたキラキラの器に細かい炭酸の泡が良く映える。ジョッキは持ち手がたくましくて頼もしい。唇を添えたら、嗅いだことのないお酒の香りがした。

 

一口。甘くない、知らない味がする、けれどもとてもとても飲みやすい。口に含むと香りがフワァッと広がり、いい香りだと思いながらも炭酸の刺激が楽しい。喉を滑り落ちるとほんのり体があったまる。酔いが、回っている。なんとも心地よく、友人とのおしゃべりも弾んだ。

 

願い通りの酒を飲み、すっかりハイボールを好きになった。どうやら糖質も低いとかで、そんなとこまで素晴らしい。

ウイスキーについて全く知らなかったので最近になって『ウイスキー入門』なる本を読んでみた。これは日本酒の本にも思ったことだがお酒の本は書いてる人が心の底からお酒が好きなんだなというのがビシバシと伝わってきてものすごく小気味好い。本文にあった、「樽熟成中に空気中に蒸散して減った分は『天使の分け前』と呼ばれる」といった話があったが、なんとも素敵ではないか。

 

こういうのを読むと、弱いながらも楽しくお酒を飲みたくなる。その種類はまだまだ知らない、これから増えて行く喜びがあるというのは面白いことだ。

 

ハイボール、大好き。