たべもののはなし

食べることばかり考えてる

ういろうの速度

もう名前で勝ってる。「ういろう」、なんでかはわからないけど「君はまったくしょうがないなぁ…」という気持ちになってくる。名前っぽいというか、「ういろう」の「うい」から「うい奴め」「初々しいのう」とかを連想してるのだろうか。なんか私の心には謎の殿様がいるっぽい。まこと不覚である。

 

一方食べ物としては、わりかし覚悟を持って向き合っている。というのも、軽い気持ちで食べ始めると美味しい上に意外とどっしり重いので満腹をゆうに超えてしまうからだ。

 

あんな美味しいのはダメだ。食べすぎてしまう。けれども食べてしまう。昔はどうであったか分からないが、まずあのフィルムにパツパツに詰まったビジュアルに毎度可愛くてやられる。銀色の金具の封印を解いてやると「ぷるん、ぺろん」とした中身が顔を出す。ツヤッツヤでむっちりもっちり。ゆっくりゆっくり、「こんにちは〜〜」と挨拶されている気分になる。

 

むっちりもっちりは見た目のみにあらず。包丁を通すときもゆっくりだ。桜の花びらが落ちていくのが秒速5センチメートルならこれは一体秒速いかほどなんだ。口に含むと、お米と水とお砂糖の織りなす優しい優しい甘さに毎度、やられる。

 

あらゆる食べ物においてプレーン至上主義だが、ういろうもその例に漏れず真っ白のやつが一番好きだ。次点で抹茶味、その次に桜。桜の味ってなんかういろうにおいてはいつもあるイメージなんだけど、実際どうなんだろう。

 

つくづくお米と、ういろうにしろお煎餅にしろ日本酒にしろ、お米の関わるもののお味を堪能するたび「あぁ日本人でよかったなぁ〜〜」と思う。あの優しい甘さ、喉越し、恐らく遺伝子レベルで愛しているんだと思う。しっくりくる、落ち着く。不思議なことだ。

 

ういろう、大好き。