たべもののはなし

食べることばかり考えてる

えいひれバーニングファイア

かつて20歳が近づき、アルコールの存在が近くなるにつれ同じく歩み寄る足音が聞こえてきたのがエイヒレの概念だった。

 

イカの塩辛を筆頭におつまみというものは昔から大変好きで、オヤツやご飯のお供に食べていた。しかし"エイヒレ"というものは知らなかった。どうやら酒類、特に日本酒ととても相性が良いらしく、その味わいもなかなかのものであるらしい…。

 

初めてお酒を飲んだのはちゃんと20歳のとき、友人宅で、蒼樹うめ先生がボトルをデザインした梅酒だった。同じクラスとはいえ今なら考えられないような、不思議なメンバーで酒を飲んだ。あれはなんだったんだっけ、ちなみにその時の肴は初音ミクまんだった(それか。ボカロ好きが集まったんだ)。

 

それからお酒を嗜む日々が始まったわけだが、お酒というものは情報として鮮烈で種類が多く刺激的であった。私はお酒が強くなく、量が飲めないため少しずつのお酒を味わうのが精一杯の楽しみ方。また食べ物とお酒を目一杯楽しむのは体調と環境が良くなければできない。ゆっくり飲むことも難しい、従っておつまみという存在は実は遠ざかりつつあったのだ。

 

して日は変わりとある秋。横浜中華街に出かけた妹が嬉しそうに帰るなり私にこう言った

「エイヒレ!!!買ってきた!!!」

記憶の彼方に消えていたエイヒレ。何だかんだ対峙するのは初めてであった。

 

袋を開ける。「いやデッカ」「そうなんよね、でかい」でかい。おつまみというより中華材料だった。迫力。海を泳いでいたんだね。

 

一口「かった」「そうなんよね」かたい。何だこれは。ヒレってなんかコラーゲン♡とかイメージするじゃん。これもう武器。調べたらどうやら炙るといいらしい。なるほどそれならば火を使おう、我々はホモ・サピエンス

 

コンロで焼くのはなんとなく気が引けたので、まずライターでチャレンジ。

ゆらめく小さな炎に巨大なエイヒレを近づける。固唾を飲んで見守る私たち。でかいエイヒレ。シュール。

 

私たちは天才なので、この炎では意味をなさずそもそもエイヒレがデカすぎるということに気がついた。

ガスコンロで再チャレンジだ!

菜箸にエイヒレを一切れ、コンロに火をつけ近づける。固唾を飲んで見守る私たち。静かに焦げるエイヒレのはしっこ。見守る私たち。相変わらずシュールだ。

 

焦げたらたぶん美味しくないだろうとそこそこなところで少し冷まして一口。なるほど美味しい!タンパク質とダシ。噛むごとに味わい深くなる風味。スルメよりもクセがなく美味しい。腹持ちとは少し異なる食べ応え。これはたしかに、お酒のお供には良さそうだと思った。この時もあまり喋らずに、妹と二人でエイヒレをもぐもぐしていた。シュール。

 

以来エイヒレが好きだ。シュールな思い出も含めて、お酒を飲むときにあるととっても嬉しいおつまみである。

 

エイヒレ、大好き。