たべもののはなし

食べることばかり考えてる

サングリア・シャングリラ

サングリアなる飲み物に初めて出会ったのは大学時代だ。

 

確か学科の新歓準備中だったと思う。先輩が「ぴーちゃん(仮名)がサングリア作ってきてくれるって〜〜!」と大変嬉しそうにしていたのだ。

 

その時まだ「さんぐりあ」という言葉を知らなかったが、「きっと作ってきてくれるのが嬉しくなるような飲み物なんだろう」と思った。また、作れるものでもあるらしい。そして、ぴーちゃん先輩なる方は嬉しくなるようなものを作ってくれる人なのだなぁと思った。

 

1時間後、ヒゲボーボーでいかにも怪しい男性がいた。いっぱい服を着てモサモサとオシャレだったがとにかく今まで会ったことのない人種だったのでめちゃくちゃ緊張してしまった。いかにもドブロク呑んでいそうな彼は、懐からなにやら大きい瓶を出し、こう言った。

「サングリア持ってきた〜〜」

ぴーちゃんだった。超びっくりした。

 

サングリア。赤ワインにフルーツを漬けた飲み物だった。赤い液体の中、輪切りのオレンジやらザク切りの林檎やらころんとした葡萄やらが踊ってとても魅力的だったのを今も覚えてる。私はアホほど真面目だったのでまだ未成年だったそのときは飲まなかったが、二十歳になるまでずっと憧れ続けていた。今もサングリアと聞いて頭をよぎるのはあの液体の魅力的な姿とぴーちゃん先輩初めましてのインパクトだ。

 

そして今、甘い飲み物はあまり飲まなくなってなおサングリアはとてもとても大好きだ。嗚呼サングリア、甘美なる液体の宝石!色とりどりの果実が弾けて、果汁と香りがキラキラ溶ける。紅のサングリア、貴方はさながら葡萄酒の夜空に咲いた花火のようだ。白のサングリア、貴方はまるで白昼夢の煌めき。スパイスは火薬の煙、日向の黒い蝶。光の輝きをより感じさせる存在。

 

食べて下さい具ですと言わんばかりにフルーツがゴロゴロ入ったサングリアも、フルーツの気配のみが溢れる神秘的な液体だけのサングリアも好き。フルーツって美味しいんだなぁ…とこんなところでも思う。

 

またこれも好きなところなのだけど、サングリアって一口に言ってもどんなフルーツを入れても良く、そのためいろんな種類があるのがもう本当に良い。普通のオレンジ、りんごといったやつも最高だけど、個人的には白ワインに桃、パイナップル、キウイなどちょっと季節を感じさせてくれるようなやつがもうたまらなく好き。赤ワインなら苺のやつがいい。たっぷり入れて、ミントを散らすのだ。

 

お酒の苦手な私にもワインの薫りを楽しませてくれるという点において、サングリアは人生における貢献度がものすごく高い。感謝、感謝である。そしてそのサングリアに出会わせてくれた不思議なぴーちゃん、彼は今夢を叶えて日々楽しくお元気そうで何よりである。

今もサングリアを頼むたび、先輩たちが迎えてくれた日にぴーちゃんさんが作ってくれたやつ美味しそうだったな…と思ってしまう。

 

サングリア、大好き。