たべもののはなし

食べることばかり考えてる

醤油の香り、旅行前夜

明日から旅行に行くので、冷蔵庫のなまものたちを食べておかねば、と思い立ち台所に立った。野菜室には、玉ねぎ、人参、メークインごぼう、こんにゃく。チルド室には牛豚合挽き、鳥ひき肉、それぞれちょっと使ってしまってあった。ふむ。

 

そして作った料理は肉じゃが、みたらし風味あんかけ鳥ごぼうつくね、きんぴらごぼう。自炊をたしなむ方ならお気づきになるだろう。使う調味料、ほぼ、いっしょ…。料理は嫌いではないがいかんせんレパートリーやアイディアが乏しい。

 

しかしそこでの発見が二つある。

 

まず、それぞれの量に差はあるにせよほぼ同じ調味料、それなのに味わいはつくづく異なって我ながら大変美味しくできた。それはひとえに、具材の持つ味わいそのものによって生まれた変化だろう。

 

 

特に肉じゃがは、とにかく野菜の甘みを感じた。

正しい作り方ではないだろうが、最初に玉ねぎを軽く、本当に軽くごま油で炒めて、油が回ったら蓋をして蒸すように熱する。しばらくしたら、贅沢にお酒を注ぐ。そしてまた蓋をする。玉ねぎの美味しさをいっぱい感じたいので十分に加熱して味の基盤を作るのが狙いだ。

玉ねぎがつるんと透き通ったらいちょう切りの人参を入れ、また蓋をする。人参がつやつやしてきたら、メークイン、砂糖、みりん、だしを入れて、また蓋。様子を見ながらかき混ぜるたび良い香りが立ち上って幸せだった。

本当なら合挽き肉は最初に入れるのだろうけど、ジャガイモがある程度火が通った感じがしてから入れた。このお肉、食べるとき歯ごたえがきちんとしていてとても美味しかった。とにかく蓋ばかりしていた、ストウブでもなんでもないお鍋だが蒸気の力に頼りきりでとっても美味しくなったので湯気に感謝。

 

二つ目の気づきは、醤油は味があまり付かないということだった。その見た目からどぎつい味がつきそうなものだとばかり思うが、考えているよりも味そのものへの影響は少なかった。どの料理に対してもである。

 

それよりはむしろ、香り・・・熱がかよって立ち上るお醤油の香りってなんであんなに幸せになるんだろうか。コトコトの鍋からふわりと香るとき、炊きたてのご飯に生卵を落として垂らしたときも、夜道を歩いていてどこかのおうちから流れてくるときですらああ、美味しそうだ・・・と思う。遺伝子レベルで愛している香りである。

そして食材の美味しさを先述したが醤油は大いにその出来に貢献していると思ったのだった。出来上がった煮物の野菜を噛みしめたとき、口いっぱいに広がる風味。味も、香りも、食材の味わいをぐんと底上げしながらそこに確かに存在する。

 

味があまりないと言いつつこの風味がないと美味しくない。好きも嫌いも無くなってしまうほどに愛しているのだろう、この味わいを。明日から行くのは和歌山県、どうやら醤油の発祥の地らしい。せっかくなのでお土産にひと瓶、買って帰ろうかな。

 

醤油、大好き。

 

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完全に暇な休日の思いつきで始めたブログですが、100記事目になりました。続けられたのは美味しい食べ物たちと、読んでくださる方がいるおかげです。好きな食べ物に想いを馳せるのは思った以上に幸せな時間で、なのでこれからも書いていきたいなと思っています。いつも読んでくださって、本当に本当にありがとうございます。