たべもののはなし

食べることばかり考えてる

マッシュルームの海から、波打ち際は遥か遠く

お買い物って大好きだ。スーパーマーケットはなんであんなにワクワクするんだろう。一週間分の買い出しをするのだけど、カゴいっぱいの食べ物を見ると心が躍っちゃう。我ながら単純な性格だなあと思う。たくさん、うれしい!!

 

なのでいっとき、スーパーに何もなくなったあの日は本当にドキッとした。すっからかんと言うにはあまりにもすさまじい、虚。すっからかん、は、あっけらかん、と似ていてなんだかハッピーな言葉だったんだなあなんて思ったりした。こんなことすらも日常だった恵まれた日々に感謝した。

スーパーは相変わらずワクワクする場所に戻ったが(全ての関係者の皆様ありがとうございます)、今度は違う変化を見出すようになった。や、安い・・そして、多い?気がする。外食産業に行っていたぶんの材料が売り場に出るようになったからなのだそうだ。

 

そんな日々でお買い物をしていたある日、ふと目に止まった「マッシュルーム 500円」のラベル。おっ?と思ったその視線の先にあったのは、普段見知った姿のマッシュルームではなかった。

いわゆる普段のマッシュルームは紺色の四角いパックに入ったこじんまりとしたサイズ感のやつ。しかし、そこにあったマッシュルームはA4大の段ボールに入っていたのだ。え・・・でっか、え・・・・500円!?信じられなかった。例えばうっかり手を滑らして宙を舞ったスプーンがそのまんま鍋に入っていったようなポップな奇跡の面白さがあり、ニヤニヤしながらカゴに入れた(入りきらなくてそれすらもニヤニヤを増幅させた)。

帰宅して机に置き、改めてその大きさに見入る。いやあ・・・すごいことになってるんだな・・・と思いながら梱包を解いた。もう、もう、視界に入るマッシュルームの量ときたら、今まで生きてきて一番多かった。圧ッッッッッッッ巻・・・こういうことがあるから人生やめらんないなあ、と5分ほど感慨に浸った。

 

我が家は幸いキノコ好きの集合体だけど、いくら我が家が幸いのキノコ好きの集合体とはいえこの量のマッシュルームは一気には食べきれないなあと思ったので粛粛と冷凍保存と洒落込んだ。10個1セット、刻んでラップに包んでジップロックの一番大きいやつに入れていく。そして、それが、もう途方もない・・・4回やっても、40個分を包んでもまだまだある。遠い昔、海水浴に行く前に母が話してくれた「遠泳の帰りに満ち潮が重なって、いつまで泳いでも岸にたどり着けなかったときは本当に怖かったな」という話を思い出してしまった。きみたちもしかして満ちマッシュルームかい?もしかして増えてる?それとも今この瞬間も箱の中でキノコが育っている?500円一箱の永久機関買っちゃったんかな?

 

やっと包み切ったとき、そこには包みマッシュルームが8個分。途中で怖くなって20個をアヒージョに使ったので、合わせて100個。100個のマッシュルームが、今この瞬間私とひとつの時間と空間を共有している。終わった、終わったんだ。あとは冷凍保存をして、楽しみにいただくだけだ。マッシュルームは大好きだけどたくさん食べることはあんまりなかったので楽しみだ。どうやって食べようかなあ!実は洋食や中華はもちろんほうれん草と一緒に、みたいに和風に使っても美味しいのである。

 

思えば遠い昔に母が、疲れや冷たさに打ち勝ってどんどん満ちていく青くて大きい水を無事に泳ぎ切ったから、今私がいて、マッシュルームと向き合っているんだなあと思うと不思議な気持ちである。何が誰のどんな未来に作用するかわからない。未来が見えないというのはいいことでもあり悪いことでもあるけれど、冷凍したマッシュルームの使い道以上の未来がこの先あることは事実である。そのことを楽しみだなあと思える自分でありたいし、支えてくれるマッシュルームはじめ食べ物たちには感謝でいっぱいである。

 

マッシュルーム、大好き。