たべもののはなし

食べることばかり考えてる

ソフトクリームの不思議

ソフトクリームに目がない。あらゆるソフトクリームを食べた。北海道に行った時なんか新千歳空港でバニラ味ばかり何種類も食べてお腹を冷え冷えにした。

旅先で巡り会えたら食べているし、色んな味を試す際はバニラの味も食べたくてミックスにした上で「結局美味しいのはバニラ味だなぁ」なんて思うまでがセット。

ちなみに、今まで食べた中で一番美味しかったのは金沢の東山店 烏鶏庵さんで食べた烏骨鶏の卵のソフトクリーム。別格に美味しかった。あれを超えるものに出会うのがこわいくらい。濃厚なカスタードがひんやりと滑らかな舌触りを持っているような感じである。時点で六本木つるとんたんさんのうどんソフト。ソフトクリームなのにムチムチな感じがしてたまりません。ぜひご賞味いただきたい。

 

ソフトクリームと聞いて想起する形ほど万人に共通するものはないのではなかろうか?と思うくらい、ソフトクリームの形のイメージは確かだ。

アイスの絵を描くより描きやすいかもしれない。ソフトクリーム形の元祖は分からないし、その元祖もなぜあの形状で供しようと思ったのか分からない。

 

というのも、再現するには難しすぎるのである。

 

時々ドリンクバーやスイーツ食べ放題でセルフソフトクリームの機械に巡り会えると、その直後に起こる悲劇が分かっているにもかかわらず小躍りするほど嬉しい。あんな美味しいもんの源をこの強欲な私に預けてみろよ、ただじゃ終わんねえから…と血湧き肉躍る。大体小さな深皿で受けることになるんだけど、あれはなんでなんだろう。

 

そして、毎回毎回必ず失敗するのだ…思い描く理想の形は克明に脳裏に描けるのに、指先が、機械が、ソフトクリームが、それを許さない。レバーを傾けて「ウィン…ガーーーーーーーーー」つって、もう操作不能。勢い任せの極太ソフトクリームが理想とは程遠い形で皿に満ちていくのであった。

私はそれを「なんか知らんが昔見た本で宮沢賢治がボウフラをαβγとかに例えてたなぁ」みたいな、遠い気持ちで見つめてしまう。いつだってそう。

 

ソフトクリームは難しい。なんであんな、暴れ回る上に溶けるうどんみたいなやつがお店の人の手にかかると遠い南の浜辺に打ち上げられた巻貝みたいに綺麗になるわけ?私の手元には脱皮したナマコみたいな形のやつしかないのに…と腑に落ちない気持ちで席に戻るのが常だ。

 

でも、食べると美味し〜い。いつもなら直接いくソフトクリームは、盛りが美しくないときは銀色に光るスプーンで口に運んじゃう。さながら魔法の杖みたいに口いっぱいにフレッシュな牛乳のさわやかな甘味が広がって美味し〜〜〜〜ソフトクリーム最高…

 

あ〜ソフトクリーム食べたいな。今は、できれば自分じゃなくてお店の方に生み出していただく儚い巻貝状のやつの方を食べたい。外食が恋しいという気持ちは全景だけじゃなくてこんな形でも現れるんだなぁなんて、思っていたりして。

 

ソフトクリーム、大好き。