たべもののはなし

食べることばかり考えてる

ネギトロねぎ取らないねぎ取りねぎ取るねぎ取ればネギトロ

タイトルはバグではない。ネギトロ、と発語したとき、遠い昔の国語の授業と五段活用をなんとなく思い出した次第。

 

マグロの中落ち、いわゆるネギトロをうちはよくパックで購入する。お刺身よりもお刺身然としていなくてとっつきやすく、なにより味わい深い。

 

あれは良い。ホワホワの炊きたてご飯にパカと盛り、卵黄とごま油とあれば万能ねぎやオクラ、醤油をたらり、、あなや、いとおかし。リアルな線で行くと泥のように疲れて帰ってきた22時すぎに冷蔵庫を開けたら入っていたネギトロを少々、保温全開の炊飯器からご飯を少々、刻み海苔を申し訳程度にかけて、お醤油、あぁ、あぁ……これがしたくて生まれたとは言わないが、これを知ってる人生で良かったと思う瞬間である。

 

さてネギトロ、私はてっきり回転寿司などにある「ネギの乗っかったホワホワのまぐろ」のことだと思っていたのでスーパーに並ぶそれはネギトロではなく中落ちと個人的には呼称していた。しかしネギトロと呼ぶ母が台所の帝王なので、我が家ではネギトロが通称である。内心「ちがうだろー!!!」と違和感を感じていたわけだ。

 

しかしある日、「ネギトロはネギの入ったトロではなく、ねぎ取られた中落ちのことである」という雑学を知ってたいそう驚いた。お母さん合ってるわ!何度訂正してもリモコンをチャンネルチェンジャーと呼び白い長皿をヘラと呼ぶ母である。そんな雑学知らなかろうと彼女はあれをネギトロと呼ぶだろうけれど、家庭内におけるモヤモヤがこんな形で解消されるとは思わなんだ。

 

そういえばリアルねぎとり体験をしたことがある。東京は荻窪のマグロマートさんにて、マグロの肋骨に当たる大きな骨にたっぷり身がついたパーツをいただいたのだ。スプーンで丁寧に、豪快に、モリモリ身を削いで舌鼓を打ち、酒をちびちびと…あれは美味しかったなぁ。今思うとあの手の感触は「そぎ取る」よりも「ねぎ取る」の方がしっくりくる。何かこう、柔らかいがしっかりとした身を、筋の存在を感じながら滑らかに、こう、ネギ〜〜ッと取っていく感じ。取るでもほじるでも削ぐでもけずるでもない。あれはネギ取る、であった。筍の「えぐみ」が得て妙すぎてほかの言い方で表せないように、マグロの身はねぎ取るものだった。日本語というのは面白い。

 

あぁ、ネギトロよ。ほかのお刺身やお寿司も大好きだけど。おそらくネギトロ、そしてお醤油、君は白米と相性が一番いいのではないか?個人的な好みで言えば挽き肉好きとも関係するのかな、恐らく私が慣れ親しんだ「家庭の味」であり、しみじみおいしく感じるのだと思う。

 

ネギトロ、大好き。