たべもののはなし

食べることばかり考えてる

たべもののまわりのはなし①:staubのお鍋の土地をください

このブログも始めてから3年が経ったらしい。今でもおかげさまで健康で、まいにち食べ物が美味しい。食べ物を食べて、選んで、料理して、楽しんで、生きている。食べ物に関わる全ての人に感謝でいっぱい。いつも本当にありがとうございます。

そしてたべもののはなしばかりしているブログではあるけれど、食器とか調理器具とかみたいな「食べ物の周りにあるもの」も同じくらい好きなので、そんな話も書いていこうと思う。
最初は初めて心から欲しいと思って買った調理器具、グレーのstaubのお鍋について書いていく。

 

 

 

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「クリスマスには土地が欲しいな」

と伝えたのは夫と付き合って最初のクリスマスのことだった。
今でもパワー系だったなと思う。正確には土地というより区画、区画というよりスペース、スペースというよりも、スッカスカなシンク下の棚の一角。
私は憧れだけで買ったグレーの鍋を置く場所が欲しかった。

 

いつの頃からかインスタグラムは友人の近況を知るためだけでなく、情報収集のツールになった。
具体的には美しい住まいや美味しそうな手料理を発信してくださる方の存在を知る場所。そして私が素敵だと思う方のおうちにはほぼ必ずと言っていいほどstaubのお鍋があったのだ。「ああこんな暮らしがしてみたい、こんな素敵なお鍋で素敵なお料理を作れるようになりたい。」憧れは募りに募っていった。


staubは調べれば調べるほど未知の鍋だった。
まず高い。何万円、みたいな単位のお金をお鍋に見ることが初めてだったのでおったまげた。
そして繊細。最初のシーズニングという作業が必須?しかも強火が不向きで使い終わったら油を塗るらしい。それまでステンレスのヤカンやテフロンのフライパンをゴンゴンの業火に晒しガンガンに水で洗うことしかやってなかった私、戸惑った。
あと持ち手まで熱くなるらしい。持てないなんて持ち手じゃないじゃん。
何より重い。5kgってなに?簡単に痩せられないぐらいの重さ…すなわち御すには力がいる。力が欲しいか?シンプルに欲しい。

それでも憧れは止まなかったので、冬のボーナスで買った。グレーのstaub直径22cmのピコココットラウンド、今も毎日のように使っている。
箱を開けた時、嬉しくて嬉しくて仕方なかった。持ち手にトリコロールのリボンを装って、紛れもない憧れがそこにいた。フランスから、ようこそ。

そして思ってたより大きかった。
今となってはなぜそんな説が流布しているのか不思議で仕方ないのだけど、買った当時は「スタンダードは22cm!」みたいな感じがなぜかすごくあった。結果としてかなり大きい部類で、個人的にはすっかり慣れたものの初めて買うならもう少し小さい18〜20cmあたりが使いやすいと今でも思っている。
当時実家暮らしだった私、さすがに専用の鍋を陣取るのも気がひけるけど油を塗った鍋をクローゼットに入れるのも憚られるなあ・・・と5秒くらい考えた結果、冒頭のように土地をねだった。戸惑いつつも快諾してもらったけど、5kgほどある鍋をリュックに入れて冬の街を歩くことになった。あの日は曇りだったことをなぜか覚えている。

 

こわごわ手を出したstaubだったけど、買ってから数年経った今もほぼ毎日のように愛用している。
カレーとかシチューとか煮物みたいなオーソドックスな使い方をすることもあれば、冷蔵庫の残り野菜と料理酒と塩をぶっ込んで蓋してほっといたらなんか美味しいのできてるみたいな世紀末料理に使うこともある。持ち手が熱くなるのは樹脂やゴムがないのの裏返しでオーブンに入れることができるので、お肉や魚はstaubに入れてローストするし最近はパンやケーキなんかも焼くようになった。

何より使用頻度が高いのは炊飯だ。我が家には炊飯器がない。夫が一人暮らしの時に炊飯器を買わずに燻製用土鍋を買ったという話を聞き(マジで当時びっくりした)、それならstaubでご飯を炊くを美味しいらしいよまだやったことないけど、と勧めたのがきっかけで鍋炊飯をスタートしたまま炊飯器を買わず今日に至る。
staubで炊いたお米は美味しい!米が立っている!という文言をよく見るし確かに美味しいと思う。個人的に炊いたご飯を冷凍→レンチンしたあともちゃんと美味しいのがお気に入り。一回に4合とか炊けるので、たらふく食べても冷凍ご飯ができるのが良い。ちょっと油っぽい炊き込みご飯とかをしても鍋なので丸洗いができるところも好き。

 

大きい鍋は未来への贈り物を作る気持ちになる。正直一回で食べ切ってしまうことがほとんどだが、多めに料理を作るという行為は未来の空腹を満たすおまじないだと思っている。staubの大鍋をかき混ぜるとき、私は未来をささやかに変える魔法を使えるのだ。

 

staubの鍋、大好き。