たべもののはなし

食べることばかり考えてる

豆腐はミステリー

その製法を知るにつけ、なぜ作られたか、なぜ作ろうと思ったかわからないものはある。

 

私にとっては豆腐がそのひとつ。豆腐はわからない。

 

豆をふやかして→まあわかる

豆乳を作って→まあわかる

にがりを入れる→わかんない!!!

 

わかんない!!なんでにがり!?塩を取った残り汁って、言うたら多分食べ物扱いされなかった可能性すらありそうなものを、なんでそんな、手間暇かけて作った豆乳に入れたんだ!?

 

そしてもっとわからないのが、にがりが入っているにもかかわらず海の気配が豆腐から全く感じられないこと。潮の味も匂いも特にない。脱脂粉乳みたいに薄くなってしまうと言うわけでもなかろう、もっと言うなら私の知るにがりはコップ一杯の水にスプーン一杯溶かしてもしょっぱいくらいだった。

 

なぜ入れた!?なぜ消えた!?つくづく不思議な食べ物である。豆腐はわからない。誰が最初に作ったんだ。

 

そういった情報はあまりなく、昔伝わってきたとかしかわからない。もっとわからないことを言うと、納豆と豆腐は製法的に名前が逆だという父から教えられた話は本当なんだろうか。たしかに納得はするが、それならどの時点で混ざってすり替わって浸透したのか、わからない。

 

でもそんなよくわからない豆腐、すごく美味しい。冷奴はもちろん、私が愛してやまないのは絹ごし豆腐とワカメのお味噌汁。少し濃いめに白味噌を解いてふるふる喉ごしの良い豆腐とワカメを存分にいただく。なんでこのふたつの組み合わせはこんなに良いんだ、君たちだって出会わなかったはずじゃないか。予期せぬ出会いによって全く知らない誰かに喜びをもたらすことがある。

 

味噌汁に豆腐を入れて、油あげを入れて、そしたらもうそれは大豆汁ではないか。大豆よ、なぜ君はこうも姿を変える。その食卓に納豆と醤油もあればフルコース、大豆最強、大豆最高。

 

謎めいた真っ白な立方体。君と、君を作った遠い昔の誰かは、一体何者なのだ。

 

おかげさまで美味しいぞ。しかし謎は深い。

 

個人的な謎として豆腐にまつわるものはもう一つある。昔ながらのリヤカーで売りに来てくれてた豆腐屋さんが昔いたのだが、そのお兄さんがめっちゃロックな格好をしていた。ドクロのバンダナに黒縁メガネ、クロムハーツっぽいアクセジャラジャラでニコニコしながらお豆腐売っていた。彼はなんだったんだろう、今どうしているんだろう。

 

豆腐、大好き。