たべもののはなし

食べることばかり考えてる

ネギへの疑問、結末を忘れた昔話

ネギと名乗る野菜は意外と種類がある。ネギっぽいも含めるとまた多い。ここではいわゆる長ネギのことを書こうと思う。

 

ネギ、大体の火を通す料理に合うからすごい。野菜炒め、鍋、ネギ一本丸ごとステーキ(これは本当いい!焦げ目がつくくらいフライパンで焼いて醤油をジュッと垂らすと中はトロトロで香ばしいご馳走ができる)、味噌汁、付け合わせにも、大体美味しいのが想像つく。ラーメンに乗せてもチャーハンに混ぜても美味しいし、青いところで取ったスープは鳥の出汁と相性抜群だし、ネギ塩ソースにしてもいい。

 

ここまで考えて、しかしネギは薬味としても天才だったと膝を打つ。冷奴や蕎麦、馬刺しに乗せる細かい輪切りのネギのなんと美味なことよ。冷たい料理、それすらも香りと食感で旨味を増幅させる。

 

どの肉にもどの魚にも卵にも合うし和洋中を無敵に美味しく網羅する天才だ。手放しで褒める。

 

しかし、そんなネギにも疑問はある。

 

喉が痛いとき、首に焼いたネギをガーゼに包んで巻くと楽になるというのを聞いたことがあるだろうか。

 

幼き頃、突き詰めれば魔女になれる気がして民間療法に非常に興味があった正直危険な時期があるが、その時のわたしは喉からくる風邪とネギチャンスを探っていた。

 

そしてついにその時が来たのである。ここぞとばかりにお願いし、焼きネギをくるんで首に巻く。

 

しかしその時観察されたのは局所的にかく首の汗(あろうことか焼きたてアッツアツのネギを巻いていた)と布団に充満するネギの香りだけだった。

 

喉がそれによって治った記憶も、もっと言うと、そのあとネギをどうしたのかという記憶も、ない。あのネギどうしたんだろう。形のあるまま首から外し、うどんにでも入れてくれていたらいいのだけど。布団に染み込んでやしなかったろうか。食卓以外で嗅ぐネギの香りはなかなかどうしてあまり嬉しいものではない。

 

なるべくあのときのネギが平和な形で収まってくれることを祈るばかりだ。ネギは、巻くより食べる方がいい。

 

ネギ、大好き。