たべもののはなし

食べることばかり考えてる

ぬか漬けと丁寧な暮らしへの憧れ

日々丹精込めて作られるものなので、ぬか漬けをいただくときは丁寧に味わいたいと思っている。

 

ぬか漬けに対してそんな気持ちを抱かせてくれたのは父方の祖母だ。里帰りで父の実家を訪ねると、毎度お茶の時間にあったかい日本茶とお菓子、そしてキュウリのぬか漬けを出してくれた。これが本当に美味しくてポリポリといただいてしまう。毎度味が深く、塩気も良く、とても美味しいのだ。

 

丁寧な暮らしの美しさに触発された延長で発酵食品に傾倒し、納豆や味噌汁、甘酒などを毎日食べていた時期がある。その流れでぬか漬けを作ってみようとしたところ、あまりの手間の多さ、日々欠かさず接する必要があること、いわば生き物のように扱うべきものであることを知った。家が火事の時、ぬか床だけ持って出てくる人もいたとかいないとか。そのくらい大事なものであると。

 

そんな莫大な手間暇かけて作った栄養豊富な美味しいお漬物。私は心が狭いので勿体なくて人に供することは躊躇われてしまう気がして、そんな形で時々会える祖母の愛情を改めて感じたのであった。

 

朝はとても早く起きて髪をセットし、肌も綺麗。家はいつもピカピカでお料理も美味しい。几帳面で丁寧な女性なのだ。卵焼きを祖母に習ったとき衝撃だった。一枚一枚、薄く焼いて重ねる!?なんということだ、しかし仕上がりは美しく味も大変美味しかった。

 

何事に対しても、丁寧に接すること、時間をかけること、それらによって得られる美しいとか美味しいとかいったポジティブな感情を大事にするのって素敵だと、ぬか漬けの手間暇を知って改めて祖母に感じたのだった。

 

いわゆる「丁寧な暮らし」だって、暮らしを想うあまり義務のような気持ちが重かったり息苦しくては意味がない。丁寧であることによって、自分と周りを大切にし、幸せに暮らすこと。その術を沢山知っている祖母は、なのでいつも笑顔だ。

 

水分を逃したはずなのにつややかでみずみずしく、色さえ鮮やかで本当に美味しいぬか漬けだ。祖母すごい。

 

ぬか漬け、大好き。