たべもののはなし

食べることばかり考えてる

卵焼きの味付けは甘いかしょっぱいか

卵焼きは甘い方がいい。とずっと思っている。お弁当に入っている黄色くて甘い卵焼きはなんといっても遠足の楽しみだ。ふくふくと良い香りで柔らかく、幸せの味がする。

他のおかずの味がしっかりしているとより一層そう感じる。もしかしたらいちばんのごちそうとして食べているかもしれない。その一方、箸休めという最高に素敵な日本語があるが、なんかそんな気分で食べていたりもする。

 

お弁当ではない卵焼きも大好きだ、と思った時、ふとそれらは甘かったっけ?という疑問がかすめた。間違いなく美味しくいただいているし大好きな、居酒屋、その他さまざまな料理屋の卵焼き。それらは、、甘くなかった気がするな。でもどれもすごく美味しい。

 

先日、時々なされる、卵焼きはしょっぱい派か甘い派かという議論が職場にて起きた。ちなみに私はそれがなぜ発生するのかと思うほど完全な甘い派である。が、ふと上の疑問を思い出して後輩に尋ねてみた。どっちも美味しいよね?と

 

そのとき返ってきた答えが、

「あったかいやつはしょっぱいの、つめたいやつは甘いのがいいですね〜」

だったのだけど、これほどまでに腑に落ちる感じを覚えるのは久しかった。

 

そうだね・・・出し巻き卵、あれあったかくて甘くない、そしてめちゃくちゃに美味しいよね・・・お弁当、お寿司屋さん、それらはひんやりして甘くて最高だね・・・。めちゃくちゃ納得して黙りこくってしまい、なぜか急に怒ったと勘違いされるほどその答えを噛み締めていた。

 

黄色くて柔らかくてふくよかでまあるい四角形で、美味しくて、そのイメージは変わらないのに、「あったかくてしょっぱい」と「つめたくて甘い」はすっかり頭の中になかった。どちらもないままに卵焼きはただひたすら美味しいものとして愛しており、どんなときも楽しく食べていた。わたしにとってものすごく不思議な現象であった。

 

正体、真理、あるいは全然そんな大げさなものではないが見過ごしている当然の現象、それらは誰かに教えてもらって気づくこともあれば、なんらかの拍子で自分で気づく瞬間もあるだろう。卵焼きにもそれはあるのだ、きっと世の中そういうことがあまりに多いに違いない。どんな事物も計り知れない魅力を孕んでいると思うとわくわくする、ゾクゾクする、この世界はなんと面白いことか。

 

卵焼き、どっちのやつも、大好き。