たべもののはなし

食べることばかり考えてる

ニューヨークチーズケーキ、移りゆく都市

ニューヨークはタイムズスクエアのど真ん中にある、「ジュニアズ」というカフェをご存知だろうか。私はとかくそこのチーズケーキに目がなく、ニューヨークに行く機会があったらどんなスケジュールであっても一度は食べにいく。

 

初めてニューヨークを訪れたのは中学生の頃だった。アメリカ!私は英語もままならない。聞こえる言葉も見える表記も全部英語、みんな私より背が高い、あらゆる事物が大きくて、街は独特のにおいがする、賑やかで車が黄色くて道路が広くてあらゆる色の光がある。刺激的だった。

 

そのときは偶々とても素敵なホテルに泊まっており、ニューヨークの食事情を全く知らなかったので大きいハンバーガーでも食べようとホテル近くの店にとりあえず入った、それがジュニアズだった。

 

ジュニアズという店はとにかくチーズケーキがたくさんあった。プレーンは勿論、チョコレート、イチゴ、バナナ、キャラメル、クッキークリームなどなど"理想のアメリカスイーツ"が所狭しと並べられている。メニューも豊富でパンケーキなどもあったが、やけに美味しそうに見えたのでプレーンのチーズケーキを注文した。

 

そしたらもう、あまりの美味しさにぶっ飛ぶかと思った。こっくりした濃厚なチーズクリームはバニラの香りがしてすこぶるに甘く、高さがあるのでたった一口ぶんを掬い取って食べただけでも柔らかいパンチを食らうような衝撃がある。次の一口もどっしりと隙なく密度が高く、フォークはゆっくりゆっくり通っていく。滅多にないことだが、紅茶よりもコーヒーが飲みたくなるような味わい。なんだか、チーズケーキを超えてニューヨークという概念を食べているような気さえした。

 

あぁ、なぜ世界各地にあるチーズケーキの中でもとりわけニューヨークと名を冠するものが有名なのかやっとわかった。こんなに楽しいケーキならばみんな大好きだ、と思った。

 

大きさ、濃さ、甘さ、どれもがエンターテイメントかと思うほど振り切れている。焼くのも技術がいるだろうけど、大きなオーブンからあの幸せの塊を出すときどんな気持ちになるだろう。1人じゃとても食べきれないから、大事な人たちとワイワイ食べたい。

 

次はいつジュニアズのチーズケーキを食べに行けるだろうか。初めて行った当時は9.11から5年ほどだったときだったと記憶しているが、ハッピーな空気はありつつも町中に警察官が立っていて少し緊張感が漂っていた。あらゆる場所にゴミ箱が置かれて雑多ながらも清潔だった。

それから何回か訪れているが、先月行ったときはもう警察官はあんまりいなくて、ゴミ箱も少なくなっていた。

タイムズスクエアはディスプレイがめちゃくちゃ増えて、トイザらスも無くなっていた。何より私自身、もう大人だ。都市も人も姿を変える。でも、ジュニアズのチーズケーキは相変わらず美味しかった。そのことがたまらなく嬉しかった。

 

ニューヨークチーズケーキ、大好き。