なめこのぬめり
家族でなめこのお味噌汁を飲んでいたある夜、祖父がうっかりなめこを吸い込んで咳が止まらなくなったことがある。
当時私は5歳位であったが、思い切って台所に走り、大きい椅子を引きずり出して水を汲んで祖父にあげた。祖父は無事それを飲んで落ち着いたが、それ以来なめこが苦手になってしまった。
しかし私は幼いながら人を救ったような気持ちになり、そのことがとても大きな自信になったのでなめこという食べ物に対して非常にポジティブな気持ちを持っている。
そもそもなぜそんなことが起きてしまったかと言うとなめこのネバネバというか、ヌメヌメというか、あれに起因する。
生き物が作り出す不思議な物質といえば蜘蛛の糸などが挙げられがちだが、なめこのネバネバもなんならカウントしたいくらいに想っている。はっきり言って好きだ。栄養素とかではなく、あのネバりともヌメりとも違う感触、ともすれば清涼感さえ覚えるあのジェル的なやつ、あれは何なのだ。
あれがなめこの美味しさを爆増ししていると思う。便宜上ぬめりと言うことにするが、あのぬめりが無ければなめこをこんなに好きにならなかった。少し濃い味付けの味噌汁になめことワカメと絹豆腐。もうそれでいい!ずるっと食べたら広がる無限の旨味にご飯が止まりません。たまりません!!
似たようなものだとじゅんさいがあるだろうか。一度だけ食べたことがあるがあれもまぁ、素晴らしいツルリ感。なめこともまた違うし、なんならあらゆるあのヌメヌメ系のものと違う。only oneじゅんさい。ツルッ、コリッ、シャリシャリ。
じゅんさいの農法や採り方を特集していたテレビをたまたま見たが、手間と技に大変驚いた。しかしどんな食べ物にもその手間というか、かけられている時間を考えるとすごく遠くまで意識が行く。なめこも、あのぬめりを保ちながらスーパーに並ぶまで沢山の人の手と場所を渡ってきたのだろう。
自然が作り出した不思議を、人の時間と技術と愛情を以って日々頂いているのだなぁと、なめこのぬめりに思う。ありがたいことだ。
なめこ、大好き。