ムール貝に見る成長
ムール貝に対する印象は「パエリアの目立つ具」であったが、昔、家族でニューヨークに行った時以来「美味しくていっぱいある好きなやつ」に変わった。
そのときは2回目のNYで、中心部から少し外れたところも行ってみよう!な旅だった。その際訪れた街のひとつがリトルイタリー。アメリカにいながら雰囲気は完全にイタリア(っぽい感じ)で、ふらっと入ったレストランのおじさんがまあ陽気なこと!オレンジ色みたいな空気は今も覚えている。
たくさんのものを食べた。はず、というのも恥ずかしながらあまり記憶になくその時撮った写真の上のテーブルがお皿でいっぱいなのだ。
だが、唯一覚えているのは供された中で一番美味しかったムール貝。山盛り。バケツのようなお鍋いっぱい。いくつあったんだろうというくらい大量。
そしてまあ美味しいこと美味しいこと・・・プリップリの身はオリーブオイルとガーリックの香りがする。塩気が絶妙で夢中で食べた。貝のエキスがふんだんに出た半透明のスープも本当に美味しかった。あれ以来「パエリアの目立つ具」は「美味しくていっぱいある好きなやつ」に変わった。
しかし、とにかくお腹がいっぱいになった。貝でお腹がいっぱいになるなんてそうそうない。一生分のムール貝を食べたんじゃないかと思ったほど贅沢な体験だった。
今となって思うのは、あれはお酒のお供だったのだろう。イタリアのワイン、貝なら白かな、ちょっと辛口のやつを飲み、ムール貝を一個食べ、一口飲み、二口のみ、一個食べ、一口飲み、一個食べ、飲み、食べ、飲み、飲み、飲み、食べて食べて食べまくる!
しかしその当時私は小学校高学年とかだったので、ひたすらに貝を食べていた。無心。美味しいという感覚以外が無。貝を口に運び、食べ、咀嚼し、美味しいと感じ、貝殻を置き、また次。わんこムール貝。幸せな時間だったが多分想定された食べ方ではなかったかもしれない。
まあ多分そのおかげで記憶も未だ鮮烈なのだ。しかしお酒の味を覚え胃袋も大きくなったいま、もういっかいあの大量のムール貝に出会いたい。出会って、「子供の頃の記憶」が「美味しいお酒の思い出」に変わる体験がしたい。というかもう普通に食べたい。あのお店、どこだったんだろうなあ。
ムール貝、大好き。