たべもののはなし

食べることばかり考えてる

タピオカは軽やかに、楽できちんと。

近頃、若い女子を中心とする行列を見かけるとだいたいその先には黒い宝石とオリエンタルな看板がある。そう、タピオカだ。何ってタピオカは私も大好物で、従って欲して向かうのだがいつもこの行列に「ギャン」となってしまい最近タピオカを嗜めていない。

 

人生で、本当の本当に最初に出会ったタピオカは母の友人が作って持ってきてくれたお手製のタピオカココナッツミルクだった。なにこの、透き通ったつぶつぶ!!!母は「カエルの卵だよ」と私を脅かしたが、見た目にとても美味しそうだった。幼少時からグミなどに親しんでいたせいだろうか。味というよりも食感が不思議だったのを今も覚えている。ココナッツミルクとも、一緒に入れられていたいちごとも違った。

 

そしてある日タピオカは「かわいい食べもの」として我々の前に現れた。パールレディというタピオカ屋さんが出てきて、それがものすごくかわいいのだ。白一色しかないと思っていたタピオカだが、そこでは普通のタピオカだけでなく、黄色、水色、ピンクといったカラフルなタピオカ、そして黒のタピオカが選べたのだった。とっても美味しかった!紫芋味が濃厚で甘くて最高。でも、当時はまさかその何年か後に黒のタピオカが一番人気になるとは思わなかった。いま流行っているタピオカはとても本格的だと思う。黒糖の甘さをたたえた黒真珠のような大粒のタピオカに香り高い中国茶、濃厚なミルク。氷の量も甘さも選べる。おいしくて、おなかもいっぱいになって、とても良質な贅沢をしている豊かな気持ちになる。

 

何にも流行はあり、食べ物も然りだ。記憶の中にあるだけでもクレープ、フレンチトースト、パンケーキ、生キャラメル、ラテアート、ポップコーン、マカロン、果肉たっぷりかき氷、、どれも記憶の彼方でキラキラしている甘く素敵な食べ物たちだ。

そして思う。だいたい並んでいたが、カフェなどお店で楽しむものが多かった。そしてタピオカはどうだろう、イートインがあるにはあるがテイクアウトを前提としている。そして手が汚れず、アクションとしても飲むだけ。値段も安からず高からず。

気軽で手軽、めんどくさくなくスピーディー、でもちゃんと美味しくて本格的。そういうのが求められてる時代なんだと思う。難しい手順を踏むものが尊ばれたり、お店に行くことでのみ得られて店舗による独自性を楽しむものが受け入れられるタイミングもあるだろう、しかし今は楽チンだけどきちんとしてるが愛されるのだと思う。

 

少し話は脱線する。私は料理本コーナーに立ち寄ることで日々心の安寧を保っている人間だが、特にここ最近「作り置き」「すぐ作れる」「夜遅くても大丈夫」がほんとうに多い。皆忙しくなってしまったのかな、疲れてる人が多いのかな、と思う。

あるいは見方を変えると忙しくてもちゃんと料理したい、栄養の取れたものを摂りたいという願いを汲み取られているのかもしれない。その気持ちは私自身とてもある。

雑と楽は違う。きちんと、でも大変じゃなく日々を営んで、たまの手軽なご褒美も忘れず。軽やかに自分を大切にしたい。そろそろ、行列が落着くタイミングを見計らって買いに行きたいな。

 

タピオカ、大好き。