たべもののはなし

食べることばかり考えてる

エリンギ、転校生の妄想

突然現れたのに、いつのまにか皆と馴染んで誰とでも仲の良い人気者の転校生。

 

エリンギに対してはそんな気持ちで見ている。

 

エリンギというキノコは「現れた」という感じがする。それまでキノコは、しめじ、えのき、なめこ、舞茸、あげればキリがないが生まれた時にはこの世界に私よりも先に存在したと記憶している。

 

ところが、エリンギは市場に「出始めた」という記憶がある。それまで店頭にあったものの認識していなかったという感じでもない。

 

先日、会社の飲み会で先輩も同じことを言っていたので多分私の他にもそんな感じでエリンギの登場を体感した人はいるのだろう。

 

さてそのエリンギ、実に何とでもよく合う。パッと思いつくだけでも、煮込みハンバーグ、アクアパッツァ、グラタン、チャーハン、バーベキュー、単体でもバター焼き、オイル蒸し、天ぷらなど本当にどうとでも美味しくいただける。

 

しかしエリンギは個性は失わず、あくまでエリンギとして迎えられる。なのに他の食材を邪魔することはほぼないからすごい。

 

色味が派手なわけでもないのに入ってると豪華というか彩りを感じるし、歯ごたえにアクセントがついて味付けのバリエーションが増える楽しみをもたらす。食感がアワビに似てるという人もいるがそれも歯ざわりゆえだろう。

 

切り方も自在、たての薄切りは勿論輪切りやみじん切りでも個性は損なわれることなく料理になる。他のキノコほど香りが強くないのもエリンギの良さではないか。家庭料理の強い味方である。

 

さて話は変わる。

 

エリンギについて私は

「突然現れたのに、いつのまにか皆と馴染んで誰とでも仲の良い人気者の転校生。」

という気持ちを持っていると書いたが、得てしてそういう謎の転校生は不思議な能力もしくは謎の使命を持っており、突然現れたにもかかわらず他の皆には始めからいたかのような錯覚をもたらしながら何事もないように生活するものだ。

突然現れたということに気づいているのは私と、後に一緒に世界を救うことになる他のクラスの普段接することもない異性だけ(ここでは会社の先輩がそれに該当するのか)。

 

…エリンギがどんな能力や使命を持ってやってきたかはわからないし、私も日々美味しくいただいているが今後も動向を見守ることにしておこうと思う。

 

ただ、これもまた謎の転校生ものによくある感情だが、私はエリンギが何者であろうとも良き食卓の友人としてこれからもやっていくつもりだ。

エリンギの使命を好きなのではなく、エリンギの味や食感、つまりエリンギそのものと仲良くなったのだから。

 

エリンギ、大好き。