モンブランという曲者
好きなケーキは?と聞かれたら、選択肢は星の数ほどあるが真っ先に胸を張って答えるのがモンブランである。
滑らかなのにざらりとした存在感も感じる舌触り、ふくよかな生クリーム、甘く煮詰められた栗、下はタルトでもスポンジでも良いが個人的にはメレンゲを焼いたやつがいっとう好きだ。モンブランのモンブランたる柔らかな部分に対し、真逆とも言えるサクサクとした食感と異なる甘さがたまらない。ちなみに銀座みゆき館のモンブランがそれである、実食されたし。
舌を通して脳にダイレクトに響くのでモンブランの強烈な甘さが好きだ。あの金の糸が絡み合って球になっているようなフォルムも愛おしい。時々いわゆるモンブランの見た目とはまた異なる形のものもあるが、可愛い毛糸玉のようなルックスはやはり良い。上手にまんまるなモンブランにフォークを突き刺す時、わずかの罪悪感もなくはないが、一口食べるとあまりに幸せになるので忘れる。
ただ、たくさんは食べられない。一個丸ごと食べた時、既に月に上陸したような満足感がある。どんなに多く食べても三個だろうし、それも相当な無理を感じながら食べるはず。それはひとえに強い甘さとお酒の香り、濃厚な舌触りによる。が、それでもまた必ず食べたいと思う。食べている時間があまりに幸せだからだ。
強烈な個性、それは時に敬遠をもたらすだろう。しかし、関わった誰かを幸せにできるなら、もう一度もその先の未来もある。溶け込むのが容易だが忘れられるくらいの感じよりは、幸せに巻き込む驚きのクセものでありたいよなぁ、となんとなく思う。
見た目もなんだか優しくて上機嫌だしね、モンブラン。
モンブラン、大好き。