なますほど年々好きになるものないな
今年のお正月に改めてしみじみ感じたんだけど、なます、舌が鋭敏になっているのかはたまたその逆に鈍くなっているのか、年々美味しく感じる。あのいわゆる紅白なますというやつ、大根と人参の酸っぱいやつである。
物心ついてから初めて食べた時はもうあまりの衝撃に吹っ飛ぶほどだった。なんなんだあの、酸っぱい上に辛くて(大根が妙に辛く感じた)ゴリゴリしてるやつ、大人は何であんなもんが美味しいんだ、、せっかくのお正月になんてもん食べんだ伊達巻食べよって感じだった。要は美味しさを全く見出せてないのだ。
しかし近年、正確に言うと二十歳を過ぎたあたりからなますがたまらなく美味しい。今年の正月なんてどっさり作ってタッパーに保存したやつ多分全部食べた。
なますを好きになる要因を考える前に、初めてなますを美味しいと思ったその瞬間のことを思い出した。
それは友人のお家に遊びに行った時だ。その友人のお母様はとてもとてもお料理が上手な方で、その日も確かお母様の手料理をいただきにお邪魔したのだった。
もうその日は思い返してもびっくりするくらい沢山のご馳走をいただいた。海外にいらした時に現地で習ったという料理の数々は本当に美味しくて、夢みたいだなぁと思いながらぺろりぺろりと食べた。
と、その時出していただいたのが、忘れもしないなますだった。
「なます…!」
当時まだなますに苦手意識が大いにあったわたしは躊躇した。な、なます、なますここで来たか、でも出していただいたお料理を断ることはできない…
えい!と食べたそのなます。初めて食べた時と同じくらい、別ベクトルに衝撃だった。
一口食べたその瞬間、めいっぱい広がる柚子の香り。酸っぱさも顔をしかめるほどでなく、むしろ脂っこい食事の後に心地よい。何よりも驚いたのは、大根と人参の味わいだ。激烈な酸っぱさがないだけじゃなくて、素材の味がちゃんとする。なんだ、なんだこの美味しいなますは!!お母さん!!なんですかこの美味しいなますは!!!
興奮しながらたずねると、にこやかに教えてくれた。お酢と砂糖だけじゃなくて、柚子の果汁とをたっぷり入れていること。そして、お出汁を入れていること。さらに、刻んだ柚子の皮を惜しみなく入れているのだと。
お出汁と柚子。日本食の素晴らしいところをギュギュッと凝縮したこの2つの要素がなますをアップデートしていた。
転換点が明確に思い出せる変化の記憶というものは実は貴重だったりするので、私はこの記憶を大切に想っている。
以来、その作り方に法ってなますを作るがおかげさまでなますは大好物になった。あぁ、今年もお正月が来たなぁ、お正月が来て嬉しいなぁと思いながら一口また一口、大根と人参とお酢と柚子とお出汁のハーモニーに酔いしれるのである。なます食べ過ぎでここ最近新年は肌が綺麗なのは嬉しい誤算だ。
なます、大好き。